期待を胸に秘め

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期待を胸に秘め


そうだ。キラキラネームというだけで就職香港酒店式公寓活動は不利になるってこの間のニュースでもあった。だがまあ、わからないでもない。どう考えてもマトモな感性の親ではない以上、本人に問題がなくとも育った環境を疑われても仕方がないのだ。

「だが、儂は思う! 例えどんな名前であっても、その人間そのものを否定する材料には決してならん! むしろ、古来より名前には力が宿るものだと言うではないか! ならばこそ、これからの将来を担うのは、お主達キラキラネームを持つ若者ではないのか!? 両親によって凄まじい力で籠められた名を持つお主達は、衰退し始め保濕針たこの国を救う英雄達に成長するだろう!」

 恐ろしい形相で語る理事長だが、言ってることは滅茶苦茶だった。そんなわけない、と一笑していいものでしかない。なのに、どこまでも真剣に話す姿は俺の心を揺さぶるものがあり、決して笑うことが出来ないでいた。

「今はお主達も自分の名前を嫌っているかもしれん。きっとその名前のせいで辛い事もたくさんあっただろう。だが、そんなお主達だからこそ誰より優しく、そして強くなれるとワシは信じておる。自信を持ってほしい。お主達の名前は個性であり、力である。決して人と違うことを恐れないで欲しい。愛によって生まれたお主達の名は、間違いなく両親の愛が籠められた名前なのだ。ここには多くの仲間がいる。共に笑い、共に泣き、共に競い合い共に悩み、そして共に愛し合え。そのために儂はこうして学園を設立し、お主達が入学出来る準備を整えた。この高校生活の三年間で、お主達が自分の名前を好きになって欲しい、儂が願うのはそれだけだ」

 自分の名前を好きになる。それは多分この学校にいる者達にとって凄く難しいことだと思う。この名前のせいで付いた傷は、そう簡単に塞がるものではない。だが、この理事長の言葉には力がある。もしかしたら俺達みたいな人間も、いつかは自分の名前を受け入れられるのかもしれないと思わずにはいられない。

「自分を信じよ! お主達の未来は他の高校の誰よりも明るい! 友を信じよ! それが将来何よりも信頼出来る財産となる! 我が魁鳴学園の子供達を! お主達の名前を! 日本に、そして世界に認めさせるのだ!」

 新入生達が立ち上がり、万来の拍手と共に歓声が沸き上がる。信じられないほどの熱気の渦が体育館を包み、館内の温度が上昇する。

 俺もその中の一人だ。興奮で体中の血液が顔に集まっているのか、異常に顔が熱い。だが不思議と心地よかった。

 まだ自分の名前を好きになったわけではない。それでもここでなら、少しは自分が変われるかもしれない。そんな期待を胸に秘めていると、魁鳴理事長の送辞が幕を閉じた。

 そして教頭が生徒会長祝辞という言葉と共に、新たな人物が現れる。

 この雰囲気の中で壇上に上がるのは凄まじい勇気がいるだろう。だが、壇上に向かう女性の背筋はピンと伸び、緊張の色さえ見せずに自然体で歩いていた。

 歩くたびに腰まである癖の強い黒髪がゆらゆらと揺れる。恐らく一七〇センチほどで女性にしてはやや長身だが、短いスカートの下から覗く足や腰回りはかなり細い。それでいて男子生徒の夢が詰まったボリュームのある胸は、嫌らしい視線を独り占めしていた。

 壇上に立つと、顔がはっきりと分かる。クラスメイトの唯一神(ゆいか)とは違ったタイプの、日本人らしい美女だ。

 新入生と保護者、それに教師を含めたら五〇〇人はいるというのに、彼女は臆することなく壇上で堂々と立つと、急に子供っぽい笑みを浮かべた。

「新入生のみんなー、入学おめでとー! 私はこの学園で生徒会長をやってる城見愛鈴(アイリーン)でーす! 二年生と三年生は君達の入学を心から歓迎するよ!」
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